モーリー物語 #8

モンテネグロはサッカー環境もすごかった。

チームから与えられたユニフォームはボロボロで、練習中の水は飲んじゃいけない色の水をホースから直で飲む。グラウンドには牛が歩いてるから避けなきゃいけないし、足元には牛のフンが落ちてるから踏まないようにしなきゃいけない。お陰でフットワークが磨かれた。

そんな生活もあっという間に時は過ぎ、1年半プレーを続けた後、オーストリアのチームへの移籍が決まった。

思いもよらぬ展開で来たこの国での生活は、自分の人生にとってすごく意味がある時間だった気がする。人の優しさや逞しさ、これまでの自分の恵まれていた環境、色々なことに気づかせてくれた。

荷物をまとめて夜行列車で空港に向かう。

夜行列車の座席は大人がギリギリ眠れるぐらい小さなサイズの2段ベッドになっている。相席(?)になったのは現地の気さくなおじさん。やたらと話しかけてきて馴れ馴れしい感じもするが、悪い人ではなさそうだ。僕は下のベッドに寝て、おじさんは上のベッドに寝た。

夜行列車が発車して数十分、駅に停車した瞬間に複数人の警察が勢いよく車内に流れ込んできて一斉に乗客の身分証チェックを始めた。列車内が騒然とする中で警察はこちらに向かってくる。

警察に逮捕されて始まったモンテネグロの生活、最後もまた警察に会うのかと心臓の鼓動がピークに達した瞬間、上のベッドから降りてきたおじさんが警察のおじさんにぶっ飛ばされた。

なんと上で寝ていたおじさんは麻薬の密売人で、警察はおじさんがこの列車に乗る情報を事前に掴んで逮捕しに来たのだった。おじさんの大きな荷物を開けるとそこには大量の麻薬。おじさんは手錠をかけられどこかへ連れて行かれた。

その場で僕も警察の事情聴取を受け、何かあったらここに連絡しなさいと連絡先を教えられ、警察は列車を降りていった。いやもう、心臓のバクバクが止まらない。自分の荷物にも薬を入れられてないか隅々までチェックし、密売人の仲間が殺しに来ないかと想像したら一睡もできなかった。電車では泣かされてばかり。

モンテネグロは最後まですごい国だった。

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